2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧
怪談 ~落書き~ 退屈な授業中、いつものように自分の机に落書きをしていた。教師に見つからないよう、鉛筆の芯を少し寝かせて、薄く、だがはっきりと分かるように。小さなキャラクターや意味のない言葉。それは山崎勇人にとって、誰にも知られてはならない…
怪談 ~匂い~ 大学生の和也は、大学近くの居酒屋でアルバイトをしていた。そこで知り合った清真とは同い年ということもあり、すぐに意気投合し、プライベートでもよく遊ぶようになった。ある晩、バイト先のトラブルで帰るのが遅くなり、和也は終電を逃して…
怪談 ~夜の公園~ 仕事を終え帰宅していた太田は、いつも通り同じ時間に自宅の最寄りの駅に降り立った。時刻は午後10時を少し回ったところ。駅から自宅までの20分ほどの道のりを、疲れた足を引きずりながら歩いていると、突然、腹部に鈍い痛みが走った。「…
怪談 ~心霊スポット~ これは、今から三十年も前の話だ。健太、拓海、勇気、遼の四人は、心霊スポット巡りという危険な遊びに熱中していた。話題の場所を見つけては、夜な夜な車を走らせる。そのスリルと、恐怖を乗り越えた後の達成感が、彼らを強く惹きつ…
怪談 ~隣人~ アパートの隣に住む下田は、どこにでもいるような冴えない40代の独身男だった。いつも同じ、色あせてシワだらけのTシャツを着て、陰鬱な空気をまとい、私と目が合ってもすぐに逸らす。1年前にこのアパートに引っ越してきてから、彼と交わした…
怪談 ~トイレ~ 千佳は夫である亮の実家に行くのがいつも憂鬱だった。 夫の実家は宮崎県にある。夫の実家に行くといつも皆が温かく千佳を迎えてくれた。義両親も、二人の子供を持つ義妹夫婦も、皆が千佳に優しかった。しかし、千佳にはこの夫の実家で唯一、…
怪談 ~大木~ カウンター席しかないバーでオカルトが好きな常連客の3人が、ビッグフットの存在有無について話をしていたが、議論が尽きたのか、みな次第に口数が少なくなってきた。そんな時、常連客の一人、40代くらいで身なりの良いスーツ姿、皆から”先生”…
怪談 ~黒猫~ 横山が暮らすマンションのほど近くに、公園がある。砂場と、木陰に据えられたベンチがひとつだけしかない小さな公園。日中は、子どもたちが遊ぶ楽しそうな声が響いているが、夜になると人影は絶え、闇に沈むように静まり返る。横山はいつも、…
怪談 ~サービスエリア~ 弘人は大学への進学で東京へ上京してきて以来、就職してもずっと東京での暮らしが続いていた。ある夜、弘人は父が倒れたという知らせを受け、急遽、新幹線の切符を手配しようとしたが、既に最終の新幹線には間に合いそうにない。実…
怪談 ~夜のスーパー~ 平田は、今日も残業で遅くなり、重い足取りで家路を急いでいた。周囲は住宅街で、遅い時間のため人通りもまばらだ。あと少しで自宅というところまで来て、平田は「しまった」と小さく呻いた。買い置きしてあったカップラーメンを、昨…
怪談 ~墓地~ 文哉の自宅からほど近いB駅の周辺には、古くからある大きなお寺と、それに隣接する広大な墓地が広がっていた。駅と自宅を結ぶ最短ルートは、その墓地の中にひっそりと設けられた私道だった。アスファルトの薄暗い抜け道の両側には、高さ約2メ…
怪談 ~ハト~ 今から20年以上昔、僕がまだ小学校3年生だった頃の話だ。当時通っていた小学校の体育館の裏には、「平和のハトの像」と呼ばれる白い鳩の像が設置されていた。高さは約1メートルほどで、翼を広げたその姿は、子供が乗るのにちょうどいい大きさ…
怪談 ~声~ 会社の資料室は、いつも湿っぽい空気が漂っていた。紙の匂いに混じって、どこか鉄錆のような匂いがするのは気のせいだろうか。中谷由佳は、今日もそこで一人ファイルを整理していた。理由は簡単。そこなら、人の『声』が少ないからだ。彼女は他…
怪談 ~音楽準備室~ 美奈は都内の中学に通う二年生。学校生活はそれなりに楽しく満喫していたが、一つだけどうしても嫌な場所があった。それは音楽準備室だった。音楽の授業は音楽室で行われる。その音楽室には、楽器を保管する音楽準備室が隣接していた。…
怪談 ~変わり者~ その日、俺たち5人は古びた旅館にチェックインした。俺、俺の親友である三浦、そして加藤、久田、井上。総勢5人の男旅だった。築100年を超えるというその旅館は、趣があると言えば聞こえはいいが、実際は薄暗く、どこか湿った空気を纏って…
怪談 ~旅立ち~ インターネットで見つけた秘湯の旅館へ、彼女の早苗と旅行に行くことになった颯太。その旅館は、最寄り駅から車で一時間、深い山奥へと向かわなければならない場所にひっそりと佇んでいた。普段はペーパードライバーの颯太だったが、この日…