怪談 ~失敗~ 今の俺は見た通りのただのジジイだが、かつては、自分で言うのもなんだがな、凄腕の殺し屋だったんだよ。冗談だろうって?いやいや、本当のことだよ。まぁ信じられないのも無理はない。とりあえず信じられなくとも、そういうことにしておいて…
怪談 ~同棲~ 鈴木が会社に着くと、課内の部下・山田が妙に晴れやかな顔をして、先輩の田中と話し込んでいた。つい昨日まで、好意を寄せていたコンビニ店員の女性に「しつこい、キモい」と言われて玉砕し、机に突っ伏していた男とは思えない。「どうしたん…
怪談 ~ゴミの山~ 山奥へ続く細い林道の先に、その場所はある。地図には載らない。看板もない。だが、近隣の住民は皆、知っていた。――あそこにはゴミの山がある。古い家電、割れた家具、黒ずんだ布団、袋の口が裂けて中身を吐き出した生活ゴミ。木々の間に…
怪談 ~雲~ 教室の窓際の席で、友人の徹が暗い顔をして座っている。いつもなら昼休みには周囲の友人と談笑しているはずの徹が、一人で窓の外をじっと見つめている。「どうしたんだ」俺は気になって声をかけると、徹はゆっくりとした動作で窓の外の空を指差…
怪談 ~リセット~ 一成は小学生の頃から、毎日欠かさず日記をつけていた。一日の終わりに文字を綴る行為は、一成にとって気持ちを整理し、翌日を迎えるための大切な儀式であった。几帳面な文字でその日に起きた出来事が全て記された日記は、一成の人生その…
怪談 ~私の番~ 夕暮れ時のラッシュアワー、電車内は湿った空気と人々の熱気に満ちていた。人波に押し流されるように座った桃香の隣の席に、一人の若い女性が座っていた。華奢で、どこか儚げな印象の女性だった。突然、その女性が激しく咳き込み始めた。ま…
怪談 ~俺の夜~ 俺は夜が好きだ。夜は人がいない。まるで世界が、自分というたった一人のために作られたかのように感じる。その静寂と広大な孤独こそが、俺にとっての至福のひとときだった。夜風が肌を撫でる初秋の深夜。時刻は0時を回っていた。俺はこの時…
怪談 ~誘い~ 気がつくと、身体は冷たい湿気に包まれていた。辺り一面、視界の全てを奪うような深い真っ白な霧に覆われている。自分の手すら、ぼんやりとした輪郭しか捉えられない。自分がどこにいるのか、どうしてここにいるのか、一切の記憶がごっそり抜…
怪談 ~百物語~ 新入生歓迎の季節が過ぎ、梅雨の終わりとともに夏が近づいてくる気配を感じ始めた頃、オカルト研究会の新入生四人は夜の部室へと集まっていた。蝋燭を立て、その仄暗い光を囲んで百物語を始める。この百物語はオカ研の新人メンバーが行う伝…
怪談 ~スニーカー~ あるフリマサイトで限定版のスニーカーを見つけた彰斗は、迷わず購入した。発売後、瞬く間に完売した幻の一足だ。数日後、待ちわびた段ボールが届いた。しかし、その日は急ぎの用事があり、開封する間もなく家を飛び出す。帰宅し、夕食…