2025-07-01から1ヶ月間の記事一覧
怪談 ~格安物件~ 山田は、同じ部署の後輩である松崎から引っ越しの話を聞かされていた。松崎が借りたというマンションの部屋は、山田の耳を疑うような物件だった。会社から数駅という近さに加え、駅から徒歩10分という好立地。築浅のワンルームマンション…
怪談 ~交差点~ たまに私は悪夢を見る。それはいつも同じ、おぞましいほどに鮮明な光景を繰り返す。夢の中で私は、死んだように静まり返った夜道を歩いている。周囲はどこにでもあるような住宅街だった。そこにあるのは夢でしか存在しないはずなのに、異常…
怪談 ~存在感~ 「あら、いたの」「さっきからずっといたよ」「ごめんなさい、気づかなかったわ」最近、妻との間でこんな会話が日常になっている気がする。いや、"気がする"ではなく、確実に頻度が増していた。最初は妻が単にぼんやりしているだけだと思っ…
怪談 ~覗~ 結衣は最近、夜になるとネットで知り合った同年代の友人彩乃とビデオチャットをするのが日課になっていた。特別な話題がなくても、くだらない雑談を交わすだけで心が和らぐ。お互いの職場の上司の愚痴を言い合い、笑ってストレスを吐き出す。そ…
怪談 ~溺~ 最近、友人の治樹の様子がおかしかった。彼の顔からは生気が失われ、いつも疲れた表情を浮かべている。心配した俊哉が理由を尋ねると、治樹は深い溜め息をつき、重々しい口調で語り始めた。数日前、治樹は近所の川で子供が溺れているのを目撃し…
怪談 ~滴り~ 古びた小学校の校舎の裏手、校庭の隅にひっそりと佇む手洗い場があった。今はもう使われておらず、蛇口をひねっても錆びついた音を立てるだけで、水の一滴も出ない。しかし、その手洗い場には、まことしやかな噂がつきまとっていた。夜中、そ…
怪談 ~雨宿り~ 「あー、降ってきやがった」フリーライターの貴志は、取材先からの帰途、激しい夕立に見舞われていた。傘を持ってこなかった自分を呪いながらも、しばらくどこかの軒下で雨宿りをしようと辺りを見回す。ふと、道の向こう側にある公園に目が…
怪談 ~バス~ 低い呻き声とともに寝ていたベッドから跳び起きた健次は深い呼吸を繰り返していた。全身にまとわりつく湿り気が不快で、着古したTシャツが肌に貼り付く感触に思わず顔を顰める。また、あの夢だ。バスが横転し、動けない体で意識が薄れていくあ…
怪談 ~プール~ 初夏の強い日差しが照りつける小学校で、6年生のプール授業が行われていた。プールサイドのコンクリートは熱を帯び、素足では火傷しそうなほどだが、子どもたちはそんなことも気にせず、水しぶきを上げて楽しんでいた。 やがて自由時間にな…